突然、その人の人生最期の散髪になったとしても「誇れる技術だった」と胸を張れるのか?
- 真吾 枝
- 2 日前
- 読了時間: 5分

突然、その人の人生最期の散髪になったとしても「誇れる技術だった」と胸を張れるのか?
僕が入社をする前からサロンに通って頂いていた常連さんのお話しです。
僕が今の理容室に入社をしたのは、今からおよそ20年前。当時、お店がオープンをした翌年に入社をしました。その頃には常連さんも沢山いて、賑わいのある理容室になっていました。
当時の僕は入社一年目のアシスタントとして働いていて、毎日忙しい日々を過ごしていました。
そんなバタバタしている僕のお店に、おじいちゃんの池田さん(仮名)という常連のお客様がいました。
池田さんは僕が入社をする前からお店に通って頂いていて、月に一度必ずカットとアイロンパーマをかけにきてくれていました。
当時の僕は入社をしたてのアシスタントです。顔剃りとシャンプー、プラスαで会話しかできませんでした。そんな学生あがりの僕にも嫌な顔をせずに、対等になんでも話をしてくれるようなおじいちゃんでした。その頃の僕は密かに、毎月来てくれる池田さんに会えるのが楽しみになっていました。
年月が経ち、当時の店長が独立をする時期になりました。僕はスタイリストとしてデビューをしていたので池田さんを引き継ぐのは僕に決定していました。店長が、池田さんに「今までお世話になりました。次回から彼が担当させていただきます。」と伝えると「宜しくね」とシワシワの笑顔で池田さんは答えてくれました。
当時アイロンパーマをかける人が少なかったので、アイロンも薬剤も池田さんの為だけの物になっていました。アイロンのコテや、薬剤も池田さんの専用コーナーとして消毒室に置かれていました。
それから池田さんは5、6年ほどお店に来てくれていました。そんなある日スタッフから一本の電話が入りました。”すぐに町内の掲示板を見てほしい”という事でした。
仕事帰りのお客様で店内は相変わらずバタバタしていました。町内の掲示板を見る事が人生で一度も無かったので、どこにあるのかも知りませんでした。スタッフから掲示板の場所を教えてもらい、見に行くと池田さんの名前がそこには書いてありました。
訃報でした。
それは理容師という仕事に就き、初めて経験をした訃報でした。悲しみもよりも驚きが勝ってしまい、実感が湧かないままお店まで戻ってきました。裏口から入って来て、ふと目に入って来たのがアイロンが置いてある池田さん専用コーナーでした。その時初めて池田さんを失った悲しみが湧いて来ました。僕が新人の時からずっと笑顔で接し続けてくれていた池田さんに、二度と会えなくなってしまった現実に気付かされました。
それでもお店は営業中です。
悲しみ続けている訳にもいかず、気持ちを切り替えて営業をしていました。
ふと気がつくと池田さんへの感謝の気持ちで胸がいっぱいになっていました。
池田さんの幼少期の頃を僕は知りませんが、誰かが髪の毛を切ってくれていたはずです。
池田さんの学生時代も誰かが髪を切ってくれていたはずです。
池田さんが社会人になり、初めてのアイロンパーマを誰かがかけてくれていたはずです。
そして、おじいちゃんの池田さんにとって何百回目かも判らない人生最期のカットを僕に任せてもらう事となりました。
理容師である僕の中で、何一つ後悔はありませんでした。池田さんの人生最期の施術に妥協が無かったからです。当たり前の様ですが、当たり前ではありません。
僕たち理容師の仕事は、毎日お客様の髪を切らせて頂くことです。お客様にとって理容室は非日常であって特別な時間です。理容師である僕達はその事を絶対に忘れてはいけません。
平均寿命で考えると、人生で髪を切るのは何百回にもなります。何百回のうちの一度が必ず、その人の人生最期のヘアカットになります。そして、それがいつ訪れるかは誰にも判りません。だからこそ常に、その人にとって人生最期のカットだとしても恥ずかしく無い妥協の無い施術を日々心がけなければいけません。
良い例えではありませんが、想像をしてみて下さい。
自分が施術をしたお客様に不幸があったとします。遺族の方も悲しみながら棺桶を覗き込んでいます
その時、理容師として胸を張って「自分が人生最期のカットを任せてもらったんだ!」と言えるでしょうか?
池田さんのおかげで、今の僕があります。唯一、恩返しができるとしたら
「最期のカットになったとしても誇れる技術」をお客様に提供し続けるという事です。理容師として一番大切な事を教えてもらいました。
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メンズカットを通してライフスタイルに寄り添う理容室です。
ビジネスマンから学生まで、清潔感と再現性の高いスタイルをご提案。
スタッフ同士も仲が良く、温かい空気感の中でリラックスして過ごしていただけます。
「髪を切る時間が、明日への活力になるように。」
そんな想いで、ひとりひとりのお客様に丁寧に向き合っています。
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